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のぅは魚になっても泳げない

泳げない日々の記録

就寝前に通学路の回想を(小学校へ向かう)

目を瞑り、朝、玄関を出るところから始める。

時刻は7時20分。シャキーンの次、はなかっぱの1つ目の話が終わる頃に家を出ると丁度いい。母がチャンネルを変えたのだろう。家の中から聞こえるアナウンサーの声に背中を押されながら、家の門を抜ける。眼前に広がるのは青々とした牧草地。所々に菜の花が、足元にはオオイヌノフグリが群れて咲いている。心地よい青臭さが鼻腔を刺激し、眠気で霞んでいた頭を冴え渡らせる。脳みそを洗濯してるみたいだ、と思う。ふふ、と笑い、牧草地の前の道を右に曲がる。視界の左端でモンシロチョウが飛んでいる。用水路を流れる水の音が聞こえる。昨日降った雨のおかげか、いつもよりも景色が鮮やかな気がする。自然と足取りが軽くなり、鼻歌を歌ってしまう。

少し歩くと左手に細い道が伸びている。草がぼうぼうで軽自動車がやっと通るくらいの細い道。ここを通ると近道なのだが、夏は様々な虫が、秋は熟した柿がこの道とその上空を埋め尽くすため、冬と春しか通れない。期間限定の秘密の近道だ。そしてこの近道にはもう一つ秘密があり、実はここ、四つ葉のクローバーの群生スポットなのだ!私は昔から四つ葉のクローバーを見つけるのが好きで、ここはお気に入りの場所の一つだった。しかし朝から四つ葉を探していると遅刻してしまうので、探したい気持ちをぐっと堪えて通り過ぎる。楽しみは放課後にとっておこう。

秘密の近道を抜け少し歩くと、民家と竹藪に挟まれた道を通ることになる。ここは通学路で一番苦手な道で、毎回通る前に躊躇してしまう。私は以前、友達のお姉ちゃんにある動画を見せられたことがある。その動画は、最初は綺麗な竹藪の画像が写っているだけなのだが、こちらが「なんだろう、なにかあるのかな?」とじいっと見ているといきなり女性の叫び声とともに血塗れの女の人の顔が画面いっぱいに写されるという、所謂ドッキリ動画であった。当時の私にとってそれはあまりに衝撃的で、当たり前のようにトラウマになり、それ以来、竹藪の前を通るとその動画を女の人の声や顔まで鮮明に思い出すようになってしまったのだ。なので、この道を通る時はなんとか思い出さないように思い出さないようにと、全然関係ないことを考えながら早足で通り過ぎるようにしている。

『この道いつ頃出来たんだろう、どんな人が作ったのかな、この道が出来る前はどんなだったんだろう、竹藪はあったのかな、あー!だめだ違うこと考えよ、カラスになったら何しようかな、まずは空から町をみて………』そんなことを考えているとやっと竹藪を抜ける。はぁ、と一息つき、さっきの空想の続きをしながら歩く。『まず寝床をきめないとな、川の近くはどうだろう、山の方がいいかな、神社のところとかいいかも、建物の屋上とかも楽しそう、あ、屋上いいな…………』

なんだか楽しくなってきて、私はカラスの歌(即興)を歌いながら歩いた。

 

 

 

絶対続く!