<meta name="auther"content="NOU"/>

のぅは魚になっても泳げない

泳げない日々の記録

(好きな)人と会った

人と会った。その人と会うのは約1年ぶりだった。その人とは小学校、中学校、高校と同じ学校だった。わたしが学校を辞めてからずっと連絡を取り合っていなかったけど、その人の受験が終わった頃にLINEがきて、会うことになった。

その人のことを空(そら)くんと呼ぶことにする。待ち合わせ場所はファミレスだった。19時にファミレスに着いた時にはもう空くんは来ていて、テキストを開いて勉強していた。席の近くまで行くと空くんはわたしに気づいて笑って手を振った。向かい合って座る。空くんが閉じたテキストには薬学部と書いてあった。

わたしはまず待たせたことを謝って、大学決まって良かったね、凄いね、と言って、水を取りに行った。「空くんもいる?」と聞いたけどいらないと言われた。席に戻るけど緊張してしまって、また、大学決まっておめでとうと言った。凄いねって何回も言った。焦ってぎこちなくなってしまう。水を飲んで呼吸を整える。空くんが「バイトしてるんでしょ?」って聞いてきて、しばらくバイトについて話した。空くんもバイトしようと思ってるらしく、塾の先生か家庭教師にしようかなと言っていて、また凄いねと言った。

メニューを見ながら空くんが最近学校であったことを話して、わたしはそれを聞いていた。空くんは話すのが大好きで、息継ぎしてる?と思うくらいよく喋る。メニューが全然頭に入らなかったけど、来る前からグラタンにしようと決めていたので良かった。空くんはなかなか決まらないらしく、それは君がめっちゃ喋ってるからでしょと思ったけど空くんの話を聞くのは好きなので別に良かった。空くんはカルボナーラにした。

料理を待っている間も空くんは沢山話した。先生がわたしを心配していたこと、今度旅行に行くこと、クラス会をすること、思ったよりわたしが元気で良かったこと、など。わたしも、通信制のことやバイトのこと、学校辞めた後のことなどを話した。久しぶりに人と話すから最初は緊張していたけど、しばらくすると慣れてきて、普通に話せるようになっていた。人と話すと喉が乾くことを思い出した。頭がフル回転している感じがした。

料理が出てくるのがいつもより早く感じた。食べてる間も空くんは話していてよっぽど喋るのが好きなんだなと思った。グラタンのチーズが伸びて、口の周りについて恥ずかしかった。意識すればするほど食べにくくて泣きそうになったけど熱さのせいにした。実際めっちゃ熱かったし。二人ともほぼ同時に食べ終わった。空くんが気を使ってくれたのかは分からないけど多分たまたまだと思う。食べ終わっても空くんは話し続けていて、よく喋るなぁと思った。

空くんは友達が多くて、「今月ほとんど用事入ってて忙しいんだよ」と言ってiPhoneのスケジュールを開いて見せてきた。予定が入っていることを表す灰色の丸印がほとんど全部の日付についていた。「見ていい?」と聞いて3月1日から順に見ていった。空くんは「恥ずかしいー!」と言っていたけどダメとは言わなかった。部活の打ち上げや友達との約束や旅行……すげーと思いながら見ていると3月15日のところに「すずかと街!!!!!」と書いてあって、「え、これって彼女?」と聞くと空くんは照れながら頷いた。わたしは「へぇー!いいな笑」と言ってiPhoneを返した。

その後も沢山喋って、21時にお店を出た。二人とも自転車で来ていた。少し雨が降ったらしく、サドルが濡れていたのでわたしがリュックからタオルを取り出そうとしたら、取り出す前に空くんがサドルとハンドルを拭いてくれた。「タオル持ってたのに!」と言ったら「今日会ってくれたお礼!」と言われた。

空くんは「事故らんようにねー!」と言ってわたしも「空くんもねー!」と言って別れた。自転車を漕ぎながら、「わたしが空くんのことを好きなのは友達としてなのか恋愛対象としてなのか」「わたしは空くんに彼女がいた事に対してショックを受けているのかいないのか」など、たくさんの分からないことをグルグル考えていた。でもわたしは空くんと手を繋いでいるところやハグしているところは想像出来るけど、キスやそういう性的なことをしているのは全く想像出来なくて、多分友達としての好きなんだろうなと思った。多分というか絶対だなと思った。でも、最も失いたくない人は誰?と聞かれたらそれは空くんになるだろうから、だからずっと友達でいてほしいと思った。ずっと、ずっと、友達でいてほしいと思った。

 

今までは自分一人で完結する生活を送っていたけど、久しぶりに人と会って、人と会うのはとても大切なことだなと思った。そして、自分と会ってくれる人がいるというのは有難いことだし幸せなことだなと思った。